既存倉庫でも実現できる低コスト空調化。断熱補強、HVLSファン、スポット空調、出入口対策の組み合わせを実例ベースで解説します。
INDEX
熱を入れない・逃がさない・人に届ける
大空間の倉庫は、天井が高く容積が大きいがゆえに、全館空調を選ぶと初期投資もランニングも重くのしかかります。出入口の開閉が多い物流現場では外気侵入で負荷が不安定になり、設定温度の維持に苦労しがちです。そこで現実的な解は、「熱を入れない・逃がさない・人に届ける」という順番で、断熱・気流・ゾーニングを賢く組み合わせるアプローチです。
第一歩は開口部の対策
第一歩は開口部の対策から始めます。ドックシールやドックシェルターでシャッターと車両の隙間をふさぎ、高速シートシャッターで開放時間を短縮するだけでも、夏場の熱気や冬場の外気流入は目に見えて減ります。人やフォークリフトの動線を妨げないエアカーテンは導入ハードルが低く、既存倉庫への後付けと相性がよい手段です。次に屋根の断熱と日射遮蔽に取り組みます。後張り断熱材や遮熱塗装を計画的に併用すれば、日射起因の負荷が確実に下がります。内部結露が懸念される場合は、換気計画や防露ディテールまで一体で検討しましょう。
気流制御ではHVLSファン、事務区画などは、スポット空調で狙い撃ち
気流制御ではHVLS(大口径・低速)ファンの有効性が際立ちます。上下の温度ムラを均し、体感温度を2~4℃ほど改善できれば、空調の設定温度を少し緩めても作業快適性を保てます。人が長く滞在するピッキング通路や仕分けステーション、事務区画などは、スポット空調で狙い撃ちにするのが合理的です。全館空調を避け、滞在エリアに集中投資するほど、イニシャルとランニングの双方が引き締まります。需要が増えた区画だけにパッケージ空調を後から追加する拡張性を前提に、今必要な範囲から始められるのも利点です。
倉庫の形状や運用によって、最適解は異なる
倉庫の形状や運用によって、最適解は微妙に変わります。高さのある平屋倉庫なら、屋根断熱とHVLSファンの組み合わせにエアカーテンを添えるだけで、夏季の体感は大きく改善します。中2階を持つ倉庫では、中2階下面の断熱補強と、上下の気流を意識したファン配置が効きます。将来マルチテナント化の予定があるなら、区画ごとに空調系統と計測を独立させ、原価管理を明確化しておくと運用がシンプルです。
導入効果の「見える化」
導入効果は「見える化」して運用で磨き上げます。サブメーターでバース、ピッキング、事務など系統別の電力を計測し、夏季はHVLS運転と併用して設定温度を1℃上げる運用に挑戦します。各バースのドア開放率をKPI化すれば、どの時間帯・どの動線が損失を生んでいるかが一目でわかり、対策の優先順位が明確になります。安全・品質面では、気流で粉じんが舞い上がるリスクの評価を忘れずに。食品・医薬系ではフィルタリングとゾーン分けを強化し、フォークリフトの走行に支障のないファン位置と高さを確保します。結露やカビ対策として、断熱と換気は常にセットで考えるのが基本です。
費用対効果の考え方
費用対効果の考え方はシンプルです。まず開口対策とHVLSで運用改善を図り、温湿度・気流・開放率の実測データで基準線を作る。そのうえで、屋根断熱や部分空調を段階的に追加していくと、投資の一つひとつに明確な根拠が与えられます。評価指標には「作業者滞在エリアの温度」「バース開放率」「電力原単位(kWh/出荷件数)」を採用すると、現場が意思決定しやすくなります。
杉本興業では、既存倉庫の実測診断(温湿度・気流・開放率)から、断熱・気流・ゾーニングの最適化、短工期・低コストでの実装までを一気通貫でご提案します。まずはサイト内の相談フォームから、現状の課題やご予算、期日感をお知らせください。なお、補助金・税制等の制度は年度で更新されるため、最新情報は個別にご確認のうえ、お気軽にご相談ください。

